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一週間を越えるキャンプロングツーリングに出かけると、現代生活から切り離され自然に任せた生活を楽しむのですが、いつものように電子製品を持ち歩いていると困ることになります。 自然の生活(?)では夜になり空が暗くなれば寝ればよいのです。蛍光灯ランタンも優に10日間は持ち、携帯ラジオも市販の単四乾電池で一週間ほど持つためそんなに神経質にはならなくて良いのですが、問題は携帯電話。 走行中はピックアップできないため電源を切っておき、休憩中(9時、12時、15時、18時の4回)に留守電チェックするように省エネ作戦を用いても4日ほどでヘタれて来ます。乾電池式の充電器では大量の電池が必要となりとても不経済。 最近ではキャンプ場で自動販売機の電源を拝借したり、ライダーハウスでも勝手に電源を拝借する輩が多くなり、みっともなく感じます。そういうことを繰り返しているとライダーは自分勝手で迷惑だという目で見られてしまい、そのうち締め出しを食らうことでしょう。 ロングツーリング玄人では、当然自分で充電する手段を用意していて感心します。私もぜひ自給自足するための手段を講じることにしました。 | |||
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充電の目的を『携帯電話のみ』にすればDC12V(バッテリー)から直結充電するケーブルを配線すれば終わりですが、どうせならAC100Vを作り出すインバーターを車載してしまったほうがデジカメの電池充電などの応用ができるため、車載作戦にすることにしました。 さっそくカー用品店にインバーターを調達しに行きました。VFR750F(RC36)のイス下スペースはV型エンジンのため恐ろしく狭く、なるべく小型で大容量のものを選択せざるを得ません。 で、選んだのが120Wの機器。容量は30W前後のクラスと100Wクラスが市販されていますが、30Wクラスだと携帯電話やデジカメの充電が精一杯で、ノートパソコンなどは使用不可能(持ち歩きませんけどね...)。 電気機器をバイクに車載する場合は、『雨に濡れないこと』という条件を満たす設置場所を探すのに一番苦労します。メーターパネル周辺、スパークユニット(プラグ点火タイミングを制御する電子回路)周辺、イス下辺りになります。 私は、スパークユニット付近を選択。スパークユニットは、車体左側のサブフレームに搭載されていますが、車体右側がガラ空きなのです。 | |||
セルスターHG-150 2005.02.27購入 \3980 | |||
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次に考えるのは電気配線。インバーターを常時バッテリーに直結するとあっという間にバッテリーが上がってしまうため、未使用時には切り離すことが必要です。 いちばん簡単なのは、バッテリーとインバーターの間にシガープラグソケットを用意し、手動にて物理的に接続/切り離しを行うこと。しかし、ツーリング中にエンジンを停止するたびにプラグを抜き差しする必要があり、万が一失念するとセルモーターでの始動不能に陥る恐れすらあります。そこで、メインキースイッチに連動する仕掛けを作ることにしました。それ以外にも、インバーター装置の取扱説明書にある注意書きにも対応した連動回路を作ります。 1・セルモーター使用時は、インバーターの電源をoffにすること。 2・常時使うつもりは無い。その場合はバッテリーと切り離したい。 3・インバーター本体のスイッチは手が届きにくいため常時onとしたい。 これらを満たす回路案として、次の2つを検討します。 A・タイマー回路で、エンジン始動後1分後にインバーターを起動する。 B・ラッチ回路を組み、プッシュスイッチで起動し、エンジンを止めると停止する。 B案が使いたいときだけ使え理にかなっていますが、プッシュスイッチの取り付けが必要となります。A案は、プッシュスイッチは不要ですが常にインバーターが生きてしまいます。回路部品等いろいろ検討した結果、B案を採用することにしました。 プッシュスイッチは、左インナーパネルに設置することにします。 | |||
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さて、仕掛けの全体像が決定したので、必要な資材の調達に出かけました。 まずは、インバーター本体を固定する金具類。耐腐食性の面からステンレス製で揃えたかったのですが、在庫切れのため他の材質と混在させました。 自分の頭の中でイメージした固定方法はこんな感じです。 | |||
2005.03.01購入 計\1764 | |||
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続いて、連動回路の核をなす部品、リレーとプッシュスイッチの調達です。 当初、自宅にあった電子回路用リレーを使用するつもりだったのですが、耐震性を考えると軟弱な作りをしていたため、自動車用のリレーを購入してきました。さすがに防滴性まで持ち合わせており必要にして十分です。 それに対して若干不安なのがプッシュスイッチ。どうしても防水仕様の物を入手したかったのですが、何故か売っていません。スナップスイッチなどは売っているのですが、これだと誤投入しっぱなしにしてしまう可能があるため避けたかったのです。結局非防水型にしました。 走行中に直接風雨が当たらないカウル内側に設置予定とはいえ、停車時には雨の直撃を食らいます。最悪は雨水により回路が導通状態になり誤投入の恐れがありますが、ショートなどの電気回路ダウンに陥ることは無いため、ここは目をつぶりました。 | |||
エーモン #1244 防滴型リレー 2005.03.06購入 \1449 エーモン #1576 プッシュスイッチ 2005.04.06購入 \714 | |||
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ケーブルにも気を使いました。というのも、以前レーダー探知機やグローブヒーター用の配線をしたときに使用したケーブルが一般電子回路用の耐熱ケーブルで10年も経過するとかなりボロボロ。 カウルの内側なので大量紫外線の直射日光は避けられますが、オイルクーラー、ラジエター、エンジンの放射熱や真夏の猛暑、真冬の極寒とかなり厳しい環境にさらされており、耐候性が要求されます。 が、耐熱&耐候性を持ち合わせたケーブルが入手できず、電子回路用よりマシということでバイク用品店で売られている105℃耐熱ケーブルを使用することにしました。(もう10年同じバイクに乗らないとこの選択が正しかったのか結果が不明ですけどね。) それと、回路を切り離すことが必要な場所にはカプラコネクタを用意します。この仕掛けが無いと部分部分で切り離せなくなるので、たとえばカウルが取り外せなくなるなどの弊害や、回路故障時に全体を取り外さなければなりません。 メカ部分を持ち壊れやすいプッシュスイッチやリレー周辺には必ず仕込んでおきましょう。 | |||
REV'S製 2.0sq/4m 2005.03.06購入 \252×2(黒・赤) デイトナ製 110型2極カプラコネクタ 2005.03.06購入 \294 デイトナ製 110型4極カプラコネクタ 2005.03.06購入 \346 REV'S製 平型端子 2005.03.06購入 \168 | |||
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パイクの部品はネジ一本まで番号管理されていて、自由に買うことが出来ます。ホンダから提供されているパーツリストを元に品番さえ調べれば、なじみのバイク屋に頼めばすぐに入手できますし、最近はインターネット通販で購入も出来ちゃうのでとても便利です。 今回は、左インナーパネルにドリルで穴を開けてプッシュスイッチを固定するつもりなのですが、万が一失敗すると格好が悪いので、新しいのをもう一つ買ってからチャレンジすることにしました。 写真中央が、穴をあけるつもりの『左インナーパネル』。 ちなみに、インターネット注文をすると送料がかかるため、常日頃から必要になったパーツやもうすぐヘタリそうなパーツの番号を控えておき、頼むときに一気に頼みます。 VFR750F(RC36)のパーツはメーカー欠品が出始めています。要はホンダにも在庫がなく、次回入荷が未定のもの(もしくは、販売終了もあります。)。ヘタすると1ヶ月とか待たされますが入手できればまだラッキーです。 | |||
#64595-MT4-000ZB 2005.03.05購入 \1010 | |||
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なぜか自宅に有る電動ドリルとドリルビット(刃)。趣味(?)でプラスチックケースや金属ケース加工に使用しています。作品の一例は電気関係のページでも紹介している"自作充電器"などなど。 今回は、この加工工具一式を使って、プッシュスイッチを取り付ける穴をあけることにします。 1.電動ドリルとドリルビット、センタポンチ、リーマの加工工具一式 ドリルビットは直径1mmから9mmまで0.5mm刻み。穴をあけるときはいきなり太いドリルビットを使用するのではなく、細いものから徐々に太くしていくのが綺麗に穴あけする秘訣です。 そして、欠かせないのが最初の穴『先進導坑』をブレないようにするセンタポンチ、ドリルで開けた穴をさらに広げるリーマです。 2.左インナーパネルとプッシュスイッチ さて、コチラは加工前の新品インナーパネルとプッシュスイッチ。あたりまえだけどまだ綺麗ですね。 3.センタポンチ打ち 目標を決めたらセンタポンチを強力に打ち込みます。金槌で打ち込みます。 先進導坑を確実に食い込ませるために、くぼみを付けるのです。 4.先進導坑 まずは細いドリルビットを使用して丁寧に穴をあけていきます。細いドリルほど回転するときの抵抗が少ないためブレにくくコントロールがしやすいのです。 5.本坑 先進導坑が目的の場所にあいたのならば、徐々にドリルの径を太くしていきながら、私の手持ち最太ドリルの9mmまで穴を広げていきます。 ここでも、一気に太いドリルを使用すると刃が食い込んで失敗するため、ジワジワと根気良くドリルを太くしていきます。 6.リーマ加工 ドリルビットは9mmまでしか無いので、そこから先は人力で穴を広げていきます。円錐形のヤスリを手でグリグリしながら穴を広げる工具です。 7.加工完了 さぁ、穴あけ加工完了。後はヤスリをかけてバリを取れば完成です。 8.完成 ジャジャーン♪ 仕上がりはこんな感じになりました。 | |||
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さっそく金属パネルを使って設置....という訳にはいきませんでした。金属パネルを仕込む隙間がありません。わざわざ長いボルトまで別に購入して準備していたのに... 仕方が無くインシュロックで固定する作戦に変更しました。中央2本のインシュロックで上下動の抑止、金属パネル1つを使用して左右動の抑止をしています。 インシュロック自体にもグレードがあり、耐熱85℃のものを選択。本当ならば耐候性を併せ持つものを入手したかったのですが、明記されたものが売っていません。 耐候性の無いインシュロックほど危険なものはありません。特に今回のようなテンションがかかる使い方をしていると時間の経過と共に弾力が無くなりプツッと簡単に切れてしまいます。 耐候性グレードは紫外線吸収剤(黒)を含むため黒い色をしています。とりあえず色だけは黒いものを選びました。 こうもうまくカウルの内側に収まるとは! トレビア〜ン! | |||
六角ボルト8mm×80mm/100mm 2005.03.06購入 \252×2 タイラップ250mm黒 2005.03.12購入 \535 | |||
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さて、実際の電気配線に入る前に、どのようにケーブルをつなげばよいのかを示す結線図を書いてみました。配線の途中から突然ケーブルの色が変わってしまう辺りが素人臭いのですが、そんなに何色もケーブルを揃えていたら大変なのでここは泣く泣く無視することにしました。 バイク本体のキースイッチに連動した電源は、メーターパネル裏の『白/緑』ケーブルから分岐させます。 ケーブルの分岐には、一時期は配線コネクターなるものを使用していましたが、信頼性が低く激しい振動でチャタリングが発生するようになったため、最近は全て圧着端子加工をするようにしています。 | |||
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さっそくメインキースイッチに連動した電源系統である『白/緑』ケーブルを見つけなれければなりません。このケーブルはメーターパネル裏のコネクタ密集地にあるため、バックミラーとウインドスクリーンを外す必要があります。 さて、そのままでは分岐させることが出来ないため、何らかの仕掛けが必要となります。最初の頃は配線コネクターを使用していましたが、今はご覧のように圧着端子同士をネジ止めしています。 『白/緑』ケーブルを切断し、その両端に圧着端子を取り付けます。 半田ごてを使用する半田付けと違い、圧着端子の取り付け作業には電源不要の人力工具"圧着ペンチ"のみというのがウレシイ♪。 すでにレーダー探知機の電源やグローブヒーターの電源もここから分岐させているので圧着端子がいっぱいです。 | |||
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リレー回路は、風雨の心配の無いシートの下におきます。回路といったほどのものでもないので、ハーネス風に仕上がってしまいました。 配線作業にかかる前準備として、リレーに付いているケーブルにはあらかじめ圧着端子をつけておきます。またラッチ回路を構成する小信号整流用ダイオード10D-1(耐圧100V定格電流1A)には熱収縮チューブを巻いてから、 両端に圧着端子を取り付けておきます。 そして、結線図のとおりメーターパネルの裏から引いてきた電源ラインと、インバーター起動スイッチからの信号を結線します。接続はネジで圧着端子自体を止めてしまうだけです。 最後に絶縁対策と振動対策の為にインシュロック、場所によってはマウントベース商品名?インシュロックと両面テープを組み合わせたもの)を使用して、確実に固定します。 写真は、最終固定前の仮配線状態です。 | |||
タイラップ140mm黒 2005.03.19購入 \241 タイラップ180mm黒 2005.03.19購入 \283 マウントベース 2005.04.10購入\325 ハーネスチューブ 2005.03.27購入\472 | |||
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こちらが、自動車やオートバイの電気回路に多用されている『カプラコネクタ』。 同じ名前でも規格がしっかりと規定されているわけではないので、同じ2極タイプだといっても形はイロイロ。バイクメーカー毎にイロイロなコネクタを使用しているのでまったく同一なコネクタを市販品から探してくるのは難しいかもしれません。 今回は、まったく独自の電気回路に使用するためオス−メスの1ペアが出来れば何でも良いのですが、将来の入手性も考えて広く知れ渡っているタイプを選定したほうが無難です。 でないと、将来故障等が発生して回路をつなぎ変える時に合致するコネクタを入手できなくなってしまいます。 幸い、バイクには110型と言われる形式のものが多用されており、将来にわたってもこの型ならば容易に入手できそうなのでこれにしました。 端子自体とケーブルは、ギボシ端子や平型端子と同様に電工ペンチを使用してカシメます。 | |||
カプラコネクタ110型2極 2005.03.12購入 \294 カプラコネクタ110型2極 2005.03.19購入 \294 | |||
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インバーターが作り出したAC100V電源も、うまいことカウルの外側に引き出してあげる必要があります。 ホームセンターに行って、短いAC100Vケーブル『ちょっとコード』と、コンセント部分の埃を防止するゴム製のカバーを水密性能を向上させる目的で用意しました。(ただし、ゴムの耐候性が無いため1年に一度交換するように指示されています。) AC100Vケーブルは、後部泥除け脇にあるカウルの隙間から外に顔を出せるようにしてあります。ロングツーリング時は、サイドバッグがちょうどこの位置に来るため、その中で充電をする予定です。 使わないときは、うまいこと内側に隠しておけるようにしているため、すばらしい仕上がり。 さっそく次回のロングツーリングで使用してみよう! | |||
ちょっとコード0.2m 2005.04.09購入 \360 安全プラグカバー 2005.04.09購入 \480 | |||
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さて、以上にてインバーター車載作戦は終了しました。 途中、カットアンドトライといった『やってみなけりゃ分からない』的なノリがあって無駄な部品を購入してしまったりで、終わってみてから冷静に集計すると… 総費用:\15,886円 と、結構な出費となってしまった。 ひょっとすると電池代のほうが安かったかもしれない! でも、自己満足の為にやっているので損得勘定は考えないことにします。 | |||