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アーシングとは、自動車・バイクに形成されている電気回路の帰路線を増強してあげることです。 電気回路は、電源(VFR750F(RC36)の場合の直流電源はレギュレーターやバッテリー)から負荷を通り、また元の電源に戻るループ構成になっています。 ただし、戻る線(帰路)は金属の塊であるエンジンそのものやフレームを代用(ボディアース方式)しています。 フレームはアルミニウムで出来ておりとても軽いため、同じ重量であれば銅よりも導電率が高い材質ですが、他の部品とはボルト締めだったり、間にシール用のゴムが挟まれていたりするので、電気にとっては理想的ではない可能性があります。 そこで、電気を使用する機器付近から電源までバイパスするケーブルを増設してあげます。 単純な直流回路の知識だけではなく、高周波回路の知識もあった方がいいかもしれません。エンジンの原動力であるスパークプラグから出る電流は物凄い範囲の周波数帯域を持っている気がします。(ぜひ計りたいけど高周波対応のスペクトルアナライザなんか持っていないしなぁ。) ちなみに、『接地』『アース』、及び『グランド』はいずれも『基本的には大地に電気的に接続することを意味』する用語です。なぜアースを現在進行形にする必要があるのだ? 命名の意味が良くわからん! | ||||||||||||||||||||||||||
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アーシングに使用するケーブルですが、何でも良いという訳ではありません。 バイクに使用するのであれば、『耐熱性』『耐候性』を持っていることが絶対条件です。 そこいらにあるオーディオケーブルを使うと被覆が溶けて短絡などの事故の恐れがあります。 つぎに、『単線』(1本の太い線)ではなく、『より線』(複数の細い線を編んだ線)の物を用意します。これは、直流電流であれば線全体を電流が流れますが、急激に電流が変化する高周波電流は線の表面しか電流が流れません(表皮効果)。 本当であれば、周波数帯域を自分で測定したいのですが、測定器を持っていませんので想定ですが、きっと高周波電流(スパークプラグ関係の電流は特に。)が流れているはずです。 自動車用品メーカーのエーモン製のものは1m単位で切り売りしていて、上記条件も満たしていたため購入しました。 | ||||||||||||||||||||||||||
エーモン製 #2601 105℃耐熱 8sq. \650/1m 2005.02.27購入 \3250 | ||||||||||||||||||||||||||
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あっちゃくたんし。プラントや電気制御盤などの電気回路で多用されているJIS、日本工業規格で定義されたケーブルを『つなぐ』端子のことです。 仕組み自体は簡単で、ケーブルを圧着端子の丸い筒の中に入れ、端子自体に専用工具で機械的圧力をかけてケープルを強固に接着・固定するだけです。 ところが、これがとても高信頼。 うちの会社でも標準接続方法として使用していますが、振動試験や引っ張り試験をしても性能低下が見られないのです。会社の新人教育では圧着端子のカシメ方やトルクレンチの使い方など一通りの工具の使い方を教え込まれたので、圧着作業はお手の物。 圧着端子はY型や丸型がありますが、かならず丸型を選択してください。Y型では振動などで抜け落ちる恐れがあります。 電気抵抗はそんなに変わらないと思いますが、金メッキされている高級品を買ってしまいました。 JIS C 2805 銅線用圧着端子 | ||||||||||||||||||||||||||
R8-8 金メッキ4set 2005.02.27購入 \714 R8-6 金メッキ6set 2005.03.06購入 \1029 | ||||||||||||||||||||||||||
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圧着端子に機械的圧力を加える工具です。圧着端子が振動や引っ張りに強い高信頼というのは、専用の工具を使用して正当な方法で圧着した場合にのみ得られます。必ずJIS規格適合品を使用する必要があります。 圧着端子に圧力をかけて接着する作業をカシメると呼びます。圧着端子自体を変形させて接着力を得るためで、カシメ加工からきています。 圧着端子は、使用するネジの直径とケーブルの断面積から数値化されたサイズが複数存在しています。たとえば、8muのケーブルを使用し、直径6mmのネジに適合する丸型圧着端子は『R8-6』と表現します。 使用する圧着端子のサイズによりカシメる時に使用する圧着ペンチの場所が異なりますから注意が必要です。 きちんとした工具であれば、いちど圧着作業を始めると、所定の力で完全に圧着が完了するまで口が開かないロック機構がついています。また、カシメ終わった圧着端子自体にも、どのサイズの場所で圧着したのかを示す刻印が入ります。 ちなみに、写真の工具は会社から借りてきました。めったに使わない割に、定価が\4000円程度する精密工具です。 | ||||||||||||||||||||||||||
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さて、圧着端子のカシメ方法をご紹介します。 1.ケーブルを準備する ケーブルの端は垂直に切り落としておきます。 2.圧着端子と保護被覆を準備する 続いて、圧着端子のサイズを確認しておきます。この写真では『R8-6』でした。端子サイズは必ず圧着端子自体に刻印されています。 3.ケーブルに保護被覆を通す まず最初に、ケーブルに保護被覆を通します。被覆を剥いた後にこれをやるのは厄介ですし、圧着後には通すことが出来なくなります。 4.ケーブルの被覆を剥く ケーブルの被覆を芯線に傷をつけないように剥ぎ取ります。専用工具のワイヤストリッパ(皮剥き機)を使うと確実です。 そして、剥ぎ取る長さですが、圧着端子の筒の長さ+1mm〜1.5mm長いぐらいです。この長さは仕上がりにとても重要な意味を持ってきますので、確実に長さを合わせてください。(8項で述べます。) 5.圧着ペンチの場所を確認する 圧着ペンチにはいくつかの圧着場所があります。写真では(多少見にくいですが)『1.25』『2.0』『5.5』『8.0』となっています。今回は『R8-6』端子を使用するため『8.0』の場所を使います。 ちなみに、これ以上のサイズになると手動では圧着できず空気圧等を使用するさらに特殊な工具が必要になってきます。アーシングをするのであればケーブルの太さは8muまでにしておきましょう。 6.圧着端子をセットする 圧着端子を圧着ペンチにセットして、軽くつまんだ状態にします。 ちなみに、圧着ペンチの凸部が圧着端子の上部の線が入っているところにセットします。 7.ケーブルを通して圧着する 圧着端子の筒にケーブルを通して、一気に圧着ペンチを握ります。間違って指などを挟むと取れなくなるため細心の注意を払ってパワーを込めます。 このとき、ケーブルの被覆を噛みこまないように注意します。 8.圧着完了 圧着が完了すると、圧着端子自体にカシメた後が残ります。そして、ココが重要! ケーブルは、ネジ側に1.0mm程度露出しており、かつケーブル被覆側にも0.5mm以下程度露出している必要があります。 これは、きちんと圧着端子の筒を通り抜けた状態で圧着されているか、かつケーブル被覆を噛みこんでいないのかを容易に確認するためなのです。 インターネットでアーシング加工されている方の写真を見ると正しく圧着していない人がたくさんいます。 電気工事士の実技試験では被覆噛み込みは失格となってしまいます。 9.正規工具の証・サイズ刻印 圧着端子の裏面では、圧着ペンチの『8.0』を使用してカシメたことを示す『8』の刻印が残ります。(写真では端子が光って見づらいですね。) 10.保護被覆を被せる 最後に、最初にケーブルに通しておいた保護被覆をこの位置に被せて完了です。ビニールテープなどでも代用できます。 | ||||||||||||||||||||||||||
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こちらは、JIS規格非適合の圧着工具で、圧着端子以外にギボシ端子・平型端子の圧着やワイヤストリッパなどの機能がすべて『簡易版』という形でついている欲張り工具です。 ケーブルの接続は圧着端子をメインに使っているのですが、カプラコネクタを設ける際には平型端子の圧着が必要でした。ペンチでチャレンジをしたものの完全に接着できず急遽購入したのです。 さすがにペンチよりはうまく圧着出来ますが、そこは簡易版。あんまりオススメできません。第一ロック機構が無いためどのくらい力をかけたらよいのかが判らないし、柄の部分のゴムがグニョグニョで力が吸収されてしまいます。 平型端子といえど規格化はされているのでしょうが、圧着端子ほどの信頼性は持ち合わせていないようです。ギボシ・平型端子圧着用のしっかりとした工具を見たことがありません。 | ||||||||||||||||||||||||||
エーモン製 #1452 2005.03.19購入 \1869 | ||||||||||||||||||||||||||
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参考までに、平型端子の圧着方法も載せてみました。 平型端子の圧着方法は、その辺りの資料をかき集めただけの独学なので100%内容を保証できませんが… 1.資材準備 平型端子と圧着するケーブルです。ケーブルのサイズと平型圧着端子のサイズとの関係はどのようになっているのかな? 2.ケーブルの被覆を剥く 平型端子は、芯線部分の圧着と、被覆部分の圧着の2箇所に別れています。芯線部分を圧着する金属部分より0.5mm〜1.0mm程度長く被覆を剥きます。ここも圧着端子と同様に長すぎても短すぎてもいけません。 3.平型端子にセットする ケーブルを平型端子にセットします。写真のような感じになります。芯線圧着部分は被覆を噛まず、端子側に通り抜けていること、被覆圧着部は、芯線が露出していないことを確認します。 4.芯線のカシメ 芯線部分を圧着します。圧着というよりはただ単に挟み込んでいるといったイメージです。 5.被覆部分のカシメ つづいて、被覆部分も圧着します。サイズが一回り大きい場所で作業します。 6.完成 完成はこんな感じになります。 芯線は圧着部分から0.5mm〜1.0mm程度露出して芯線部分が貫通して圧着していることが確認できること。被覆側にも0.5mm以下程度に芯線が露出して被覆を圧着していないことが確認できること。 | ||||||||||||||||||||||||||
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前途の電工ペンチではイマイチ信頼性のある圧着ができないので、新たな工具を調達してきました。 その名も『コネクタープライヤー』で、平型端子などのオープンバレル型コネクタを圧着することだけを目的とした専用工具です。 見てください、この仕上がりを! 完璧な圧着です… メスコネクタならば… オスコネクタは金属が肉厚で、この工具でもうまく圧着できません。もう1サイズ大型の工具が必要です。 仕方が無いので、メス型コネクタの場合にだけ使用しています。高かったのに…勿体無いなぁ。 | ||||||||||||||||||||||||||
エンジニア製 PA-08 2006.03.18購入 \5850 | ||||||||||||||||||||||||||
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さて、VFR750F(RC36)の配線は次の3箇所にしてみました。 1.純正アース箇所 進行方向に向かって左側の冷却水パイプをエンジンブロックに留めているボルトが純正アース箇所です。バッテリーターミナルからのマイナスから伸びたケーブルが接続されています。ここに、アーシングケーブルを増設します。 2.エンジンブロック右側 今回の目的は低速トルクの改善。したがってなるべく点火プラグに近い部分に近い箇所に接続したかったのですが、あいにく場所が無く、エンジンブロック右側のクランクケースフランジボルトに共締めしました。 3.エンジン脇からシート下までのワイヤリング エンジンブロックに接続したアーシングケーブル(青色)は、メインフレームの内側を通ってシート下まで配線します。このとき、エンジンのすぐ脇を通るので耐熱性を要求されます。少なくともエンジンと直接接触することは避ける必要があり、マウントベースで固定しています。(後から知ったのですが、耐熱布チューブというのがあるらしい。) 4.レギュレーター バイクの直流電気回路の原点へもアーシングケーブルを増設します。VFR750F(RC36)のACジェネレーターの電気配線(チャージングコイル)はフレームから完全に浮いているのでジェネレーターへのアーシング配線は意味を持たないと思われます。 | ||||||||||||||||||||||||||
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インシュロック、ナイロン製の電気配線を束ねるための道具です。現在はさまざまな商品名で販売されており、米国では犯人を拘束する手錠の代わりとしても使用しています。 使い方は簡単で、ケーブルを束ねてから思いっきり引っ張るだけです。自動的にロックが掛かり、元には戻りません。もし場所を間違えたりした場合はニッパで切断するしかありません。基本的に使い捨てとなります。 種類もイロイロで、耐熱性や耐候性を持っているものがあります。バイクで使用するのであればこの二つの特製を持っているものを選択すべきです。 耐候性を持ったものは黒い色をしています。(単純に一般型を黒く着色している場合もありますが…) ちなみに、インシュロック、米国陸軍の調達規格品にもなっているほど便利で信頼性の有る道具です。 U.S. MIL Spec. 23190,3367 | ||||||||||||||||||||||||||
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アーシング対策をした結果、どのような効果が現れたのでしょうか? エンジン一発始動やアイドリングの安定などがよく言われている効果ですが、私のバイクは元々これらの性能は安定していたのでとくに変化が見られた訳ではありませんでした。 気になるのは燃費。力強い火花が飛び確実に点火するのでトルク感が増し、その結果アクセル開度が小さくなるのではないのでしょうか。 実際、低速低回転時のトルク感が改善されて、加速性能がものすごく良くなった(気がします。) …実際、加速が面白くて調子に乗ったら『赤キップ』を貰ってしまったというオマケも付いてきたほどです。 比較的走行時の環境が酷似している(ほとんど街乗りが無い、長距離を流す)ロングツーリングの時の燃費データを並べて比較をしてみると、一目瞭然! 経年変化のためジワジワと燃費が下がりつづけていたエンジンが、いきなり元気によみがえりました。 | |||||||||||||||||||||||||